Vitis™ アプリケーション アクセラレーション開発フロー チュートリアル

Vitis 入門チュートリアル

パート 3: カーネル コードおよびホスト アプリケーションの見直し

このチュートリアルで使用される例は、vector-add アプリケーションです。この例は単純なので、複雑なアルゴリズムの検討に煩わされることなく、FPGA アクセラレーションの主な概念に集中できます。

vector-add カーネルのソース コード

このチュートリアルでは、ハードウェア アクセラレータ (カーネルとも呼ばれる) は C++ で記述されています。Vitis フローでは、Verilog または VHDL でコード記述されたカーネルもサポーされます。vector-add カーネルの Verilog RTL バージョンを使用した例については、こちらを参照してください。

C++ を使用すると、ハードウェア アクセラレータの記述は 20 行未満のコードに収まり、Vitis コンパイラを使用して FPGA に簡単かつ効率的にインプリメンテーションできます。

extern "C" {
  void vadd(
    const unsigned int *in1, // Read-Only Vector 1
    const unsigned int *in2, // Read-Only Vector 2
    unsigned int *out,       // Output Result
    int size                 // Size in integer
  )
  {

#pragma HLS INTERFACE m_axi port=in1 bundle=aximm1
#pragma HLS INTERFACE m_axi port=in2 bundle=aximm2
#pragma HLS INTERFACE m_axi port=out bundle=aximm1

    for(int i = 0; i < size; ++i)
    {
      out[i] = in1[i] + in2[i];
    }
  }
}

この単純な例では、C++ カーネルの 2 つの重要な側面を取り上げています。

  1. Vitis では、名前修飾問題を回避するために C++ カーネルを extern “C” として宣言する必要があります。

  2. Vitis コンパイル プロセスの結果は、ソース コードでプラグマを使用すると制御できます。

このほか、vector-add カーネルの機能が簡単にわかるようになっています。vadd 関数は 2 つの入力ベクター (in1 および in2) を読み取り、単純な for ループを使用してそれらを out ベクターに追加します。size パラメーターは、入力ベクターと出力ベクターのエレメント数を示します。

プラグマは、関数パラメーターを個別のカーネル ポートにマップするために使用されます。2 つの入力パラメーターを異なる入力ポートにマップすることで、カーネルは両方の入力を並列に読み取ることができるようなります。この入門チュートリアルでは詳細を説明しませんが、通常はハードウェア アクセラレータのインターフェイス要件を考慮することが重要です。これらの要件によって、達成可能な最大のパフォーマンスが変わります。

Vitis のオンライン資料には、C/C++ カーネルおよび HLS Pragmas のリファレンス ガイドも用意されているので、詳しくはそちらを参照してください。

ホスト プログラムのソース コード

ホスト プログラムのソース コードは C/C++ で記述され、標準 OpenCL API を使用してハードウェア アクセラレーションされた vector-add カーネルとやりとりします。

  • このチュートリアルの src ディレクトリにある host.cpp ファイルを開きます。

この単純な例のソース コードには、4 つの主なステップがあります。

  • ステップ 1: OpenCL 環境が初期化されます。このセクションでは、ホストが接続されたザイリンクス デバイスを検出し、ファイルから FPGA バイナリ (.xclbin ファイル) を読み込んで、最初に検出されたザイリンクス デバイスにプログラムします。次に、コマンド キューとカーネル オブジェクトが作成されます。すべての Vitis アプリケーションには、このセクションのコードと非常によく似たコードが含まれます。

  • ステップ 2: アプリケーションは、カーネルとデータを共有するために必要な 3 つのバッファー (各入力に 1 つ、出力に 2 つ) を作成します。データセンター プラットフォームでは、4K ページ境界にアライメントされたメモリをより効率的に割り当てることができます。エンベデッド プラットフォームでは、連続的にメモリを割り当てる方が効率的です。これらのいずれかを達成するには、バッファー作成時にザイリンクス ランタイムにホスト メモリを割り当てさせるのが最も簡単な方法です。これには、バッファーを作成するときに cl::Buffer コンストラクターを使用し、割り当てられたメモリをユーザー空間ポインターにマップします。

    // Create the buffers and allocate memory   
    cl::Buffer in1_buf(context, CL_MEM_READ_ONLY,  sizeof(int) * DATA_SIZE, NULL, &err);

    // Map host-side buffer memory to user-space pointers
    int *in1 = (int *)q.enqueueMapBuffer(in1_buf, CL_TRUE, CL_MAP_WRITE, 0, sizeof(int) * DATA_SIZE);

注記: アプリケーションが明示的にホスト メモリを割り当て、バッファーの作成時に対応するポインターを再利用する方法もよく使用されます。この例でこの方法を使用するのは、データセンターとエンベデッド プラットフォームの両方で最もポータブルで効率的な方法だからです。

  • ステップ 3: ホスト プログラムはカーネルの引数を設定してから、3 つの操作 (2 つの入力ベクターをデバイス メモリへ転送、カーネルを実行、最後に結果をホスト メモリへ転送) をスケジュールします。これらの操作は、ステップ 1 で宣言したコマンド キューに格納されます。これら 3 つの関数呼び出しはノンブロッキングであることに留意してください。コマンドはキューに入れられ、ザイリンクス ランタイムがそれらをデバイスに送信します。この例のホスト コードで使用されるキューは順序付きキューであるため、これらのコマンドは指定された順序で実行されます。ただし、キューが順不同なこともあり、準備ができたときにノンブロッキング呼び出しが順番通りではなく、順不同に実行されることもあります。q.finish() の呼び出しは、キューに加えたすべてのコマンドが完了するまで待機する必要があります。

    // Set kernel arguments
    krnl_vector_add.setArg(0, in1_buf);
    krnl_vector_add.setArg(1, in2_buf);
    krnl_vector_add.setArg(2, out_buf);
    krnl_vector_add.setArg(3, DATA_SIZE);

    // Schedule transfer of inputs to device memory, execution of kernel, and transfer of outputs back to host memory
    q.enqueueMigrateMemObjects({in1_buf, in2_buf}, 0 /* 0 means from host*/); 
    q.enqueueTask(krnl_vector_add);
    q.enqueueMigrateMemObjects({out_buf}, CL_MIGRATE_MEM_OBJECT_HOST);

    // Wait for all scheduled operations to finish
    q.finish();
  • ステップ 4: キューに加えられたすべての操作が完了すると、q.finish() の呼び出しが戻されます。この場合は、カーネルの結果を含む出力バッファーがホスト メモリに戻され、ソフトウェア アプリケーションで安全に使用できることを意味します。ここでは、単にプログラムが終了する前に、結果が予測値と比較されます。

この例は、OpenCL API を使用してハードウェア アクセラレータとやりとりする最も簡単な方法を示しています。また、OpenCL プログラミングの追加情報も常に確認してください。

次の手順

データセンター アプリケーションのビルドおよび実行

エンベデッド プロセッサ アプリケーションのビルドおよび実行


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